高齢の両親が運転、悩む家族

 東京・池袋の事故を受けて、高齢者の運転免許の返納が増加傾向となっている。一方、公共交通網が発達していない地方部では、「車=足」であり、免許を手放すことは死活問題となっている。家族は悩み、行政も地方特有の課題と捉えながらも、抜本的な解決法は誰も持ち合わせていない。


90歳代の父が今も車運転

 東京都八王子市市で暮らし、90歳代で今も車に乗っている父親を持つ息子(59)は、1時間15分ほど離れた土地で暮らす。

 東京・池袋の事故を知った際には、「血の気が引いた。親には、『どれだけ立派な人生を歩んできたとしても、事故を起こせば”犯罪者”として人生を終えることになる。それだけではなく、家族全員の問題になる』と話した。父は理解してくれて、夜の運転はできるだけしないと言ってくれました」と言う。

 ただ、免許の返納を強くは求められていない。両親が暮らす地域は、市の中心部まで車で30分。「陸の孤島」と言っていい場所で、車がなければ買い物や通院もできないからだ。 週に何度かは買った物を届けに行くが、仕事もあり、日常は任せるしかない。

 父は耳も遠くなってきていて、介護タクシーなどをチャーターすることも難しい。この夏には免許の更新が迫る。もし、更新ができなければ、ヘルパーを頼むなど具体的な対策を考えるという。

家族通報で逮捕 車売れば新車購入のケースも

 福祉関係者も「車」を大きな課題と捉えている。あるケアマネジャーは、担当する高齢者の家族から、「親の免許を取り上げたい」という趣旨の相談を幾度も受けるが、あくまで自主的な返納を勧めるしかなく、家族とともに“説得”にあたるものの、なかなか思うように進まない。

 都市部で暮らす息子が、親に「危ないから免許を手放して」と言ったところ、「なら出かけたいときにお前が必ず帰ってこい」と喧嘩になり、あきらめたこともある。

 中には家族が免許を隠し、失効しているにもかかわらず乗り続けている親もおり、苦渋の決断として、親が車に乗って出かけた瞬間、警察に通報。逮捕してもらってでも車に乗れない状況をつくる場合もあるという。

 また、家族が鍵を隠せば合い鍵を作り、車を売りに出せば、いつの間にか新車を買っているケースもあり、行きつけの車販売店に、「来ても売らないで」と釘をさしておく人もいるそう。

 家族が免許を返納させたいと考えている親の多くが、認知症や体の衰えなど、介護サービスを利用できる状態にあることが多く、少しでも車に乗る時間を減らすため、デイサービスの利用に持ち込むこともあるという。

警察「不安感じたら免許返納を」

 70歳以上の人が免許を更新する際に義務付けられている高齢者講習を開いている自動車教習所にも、家族から「更新しないように伝えてほしい」という声が寄せられることがあるという。

 ただ、福祉関係者と同じく、教習所にも免許を返納させる権限はない。

 「教習所は安全な運転を行ってもらう場所で、運転をやめさせる場所ではない。なので、視力や視野などを検査し、自分の状態を知ってもらうことしかできない」と言い、「相次ぐ高齢者の事故を受けて、講習が厳格になる可能性はある。けれど、免許がなくなった後の救済策はない。結局は事故の予防に、行政や警察などと連携し、コツコツと取り組みを考えていくしか」と漏らす。




陽だまり介護タクシー

八王子市の陽だまり介護タクシーは、こんなに安心・便利です! 民間救急【東京消防庁認定患者等搬送事業者】